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サイパンで読書

とにかく、息苦しかった。

狭い空間の中で原稿を書いている自分に嫌気がさし、気分転換に試写に出かけても、帰りの電車のムッとする汗臭い匂いと溢れる人に嫌気がさし、肌にまとわりつくようなジメジメした気候に腹を立て、イラク措置法成立に怒り心頭、チョーむかついて、もう、イヤ、イヤ、こんな日本なんて大嫌い!ついに私の頭はメルトダウン。

発作的にサイパンへ向かった。なぜ、サイパンか?その理由は簡単、海が綺麗だからだ。都会化された、ミニハワイ的グアムの海も好きだが、サイパンの海の方が自然が残っている。

ビーチロード沿いに農耕牛や豚が飼われ、人の良さそうなチャモロのオッサンが餌を与えている姿や、決して大きくない校庭で、チャモロ中学生たちがバスケットボールに興じている姿が目に入ったりと、観光地でありながら、ネイティブとの生活空間も共有でき、気分を落ち着かせてくれる。

4日の夜便で成田を立ち、人気のないサイパン空港からスティするワールドリゾートホテル(旧ダイヤモンドホテル)に直行した。深夜だったのでビールを飲んで爆睡。

翌朝。カーテンの隙間を縫って、目が眩むような幾筋もの枝葉の陽射しが、ミラーボールのように部屋中を踊り始めた頃、私は目覚めた。時計を見ると、8時だ。熟睡した。久方気分がいい朝だ。

ストライプブルーのカーテンを一気に引くと、もう、そこは別世界だ。色とりどりのビーズやスパンコールを散りばめたような波光が煌めく。その美しい水平線を、カンパリソーダみたいな真っ青な空が鮮明に映し出している。

「あー、しあわせ…。やっぱ最高…」

サイパンは8度目なので、もう観光名所のマニャガハ島もPICもいい。

ただひたすら泳いでは飲み、飲んではビーチパラソルの下で読書。

やはり旅は人を大きくしてくれる。日本でイライラし、ゆとりのなかった自分がもうそこにはいない。メルトダウンした頭が少しづつだが、固くなってきた。旅の良さは非日常的空間に自分を持っていってくれる事だ。これはやはり国内では味わうことはできない。たった3時間だけ飛んだだけで、北マリワナ、チャモロの異文化に染まれる。

携帯もメールの受信音も聴こえない。ITがないと、いや解放されたと言っていいかもしれないが、一日がこんなに長かったのかと驚きだった。携帯やメールに費やす時間は結構な時間だったんだと、つくづく思った。

目的意識のない旅だったが、たっと一つだけしたかった事があった。6月中旬に発行された友人で作家の戸井十月さんの著書「カストロ、銅像なき権力者」をサイパンで完全読破する事だった。

戸井さんは一年半前からキューバのカストロに会いたい夢がかない、一方ならぬ苦労の末、去年の末、ついにカストロと出会う事ができた。そのプロセスを詳細に描いた渾身のノンフィクションだ。

キューバ革命は私の中で曖昧としている。カストロの同士、アルゼンチン出身の医者、チェ・ゲバラの存在はあまりにも偉大だ。そして国そのもので言えば、社会主義国でありながら、民衆がとてつもなく平和にのんびりと暮らしている国。「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」というキューバ音楽をテーマにした映画がそれを教えてくれた。

そんな断片的知識しかないが、戸井さんのこの作品を読んで、キューバという国が人と也、いや国と也が分かってきた。社会主義国でありながら、もしかしたら、世界類い稀な民主的な国、それがキューバだった。

そんなキューバを設立し、今なお存続させているのは、庶民に崇拝されている司令官フィデル・カストロの存在があってこそのものだった。一人の権力者、しかも、権力者はその象徴のために必ずどこの国でも銅像が立つ。しかし、カストロの銅像はどこを探してもキューバにはない。銅像なき権力者であるカストロという人物に、いつのまにか私も会ってみたい衝動にかられていた。

本文の中に名言がある。「百冊の本を読むより、一人に人間に会え」キューバの諺だそうだ。

せめて夢の中ででもいいからカストロに会えればと、ビーチで午睡についた。

目覚めると、相変わらず波光煌めく美しい南太平洋が目の前に広がり、私を少しだけ成長させてくれていた。

カリブに浮かぶ社会主義国家キューバとは全く違う、半分はアメリカ資本の観光地サイパン島だが、サイパンにいながら、戸井さんの本はキューバの旅までさせてくれた。
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