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あるジョッキーの転職

知り合いの地方競馬所属のジョッキーの奥様と駅前でバッタリ会った。

 かなり久しぶりだったので、「ご主人は元気にがんばっていますか?」と尋ねると、なんと、去年でジョッキーを辞めて、全く毛色の違った職に就いたと聞き、びっくりした。どの地方競馬場も不景気なのは知っていたが、まさか、知り合いの地方競馬所属の騎手が引退するなんて!

 頭をガーンとハンマーで殴られたような気がした。地方競馬衰退という大風が、私の心と体に吹き荒れていた。

 私はそのジョッキーが20代後半の頃、奥様とお子さんとも親しくなった。ジョッキーの苦労、その妻の苦労もたくさん伺った。中央競馬ばかり取材しているので「たまには地方競馬場のことも書いてくださいね」と冗談まじりに言われたこともあった。今となると力不足の自分が情けなくなって、自己嫌悪に陥った。

 「でも、今は新しい仕事でがんばっているから。別の意味でも応援してくださいね!」と奥様は満面の笑みで言った。幼いお子さんもお父さんが毎日決まった時間に帰宅して、土日、家にいるからとても喜んでいると言う。

 私はその言葉に涙が滲んでいた。笑顔は時には一番悲しい顔にもなるんだと思った。

 そのジョッキーは「いずれ中央競馬に殴りこみをかけて、ジャパンカップで優勝するのが夢」だと、目をキラキラ輝かせながら語ってくれたことを思い出していた。夢叶わず、無念の引退。その悔しさを考えると、泣かずにはいられなくなっていた。

 「泣かないでくださいよ。私まで悲しくなっちゃいますよ」と私よりもずっと年下の奥様に、私の方が反対に慰められていた。現役を退いたとは言え、騎手の妻の精神力の強さと前向きな明るさに驚嘆していた。多分、中央、地方問わず、どの騎手の奥様たちもこんな逞しい「騎手の妻魂」と持っているに違いない。競馬はまだまだ男の世界。その影に隠れた縁の下の力持ちである騎手の妻たちの計り知れない努力にも、スポットを当ててあげたいと思った。

 引退して全く違った世界で生きるそのジョッキーは、騎手という仕事は失ったが、その代償にかけがえのない大切な物を手に入れた。「家族の愛」という大きな宝物を。 
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